グローバル。コンテンツIP。エデュテインメント。この三つは独立した事業ではありません。世界へ挑戦することは、日本の価値を広げることです。IPを育てることは、未来へ受け継がれる文化を育てることです。教育に取り組むことは、未来を担う人を育てることです。そのすべてが、人を信じ、未来を創るという、私の経営思想につながっています。
私たちは、コンテンツだけを創っているのではありません。未来を創っています。世界へ挑戦することも、新しいIPを生み出すことも、子どもたちの学びを変えることも、そのすべては、日本の未来を、より豊かにするための挑戦です。私は、TBSグループを「人の心を動かす会社」から、「未来を動かす会社」へ進化させたい。その変革を、これからも力強く続けていきます。
企業は、志だけでは成長できません。挑戦だけでも未来は築けません。未来を描く力と、着実に実現していく規律。その二つが揃って初めて企業価値は生まれると考えています。だから私は、資本市場との対話を、経営における最も重要な責任の一つと位置付けています。
現在のTBSグループに対する市場評価を、経営者として真摯に受け止めています。
私たちには、世界へ広がるコンテンツ、多様な事業基盤、そして長年培ってきた創造力があります。しかし、それらの可能性が企業価値として十分に評価されているとは、まだ考えていません。だからこそ、積極的に市場とコミュニケーションを図っていきます。私たちの戦略は、本当に未来へつながっているのか。成長への投資は、資本を上回る価値を生み出しているのか。挑戦は、成果へ結び付いているのか。その考えを形にしたものが、ROIC(※注)を軸とする資本政策です。
ROICは、単なる財務指標ではありません。限りある経営資源を、どこへ投下するのか。その投資は、五年後、十年後にどのような価値を生み出すのか。一つひとつの経営判断を、未来への投資という視点と、資本効率という視点、その両方から見つめ直すための「経営の規律」です。
私はこの夏、ロンドンを訪れ、世界の機関投資家の皆さまと率直に意見を交わしました。そこで受け取ったのは、期待に満ちた激励ではなく、期待ゆえの厳しい問いでした。「放送局からの変革という戦略には共感する。しかし、成長投資が収益として表れ、その成果が数字で示されて初めて投資を決断できる」。「将来への投資であるほど、その資金の使途とリターンを、明確な目標と共に示してほしい」。
この言葉は、私の胸に深く刻まれました。世界はTBSグループの可能性を信じています。しかし、その期待はまだ未来への約束に過ぎません。資本市場が求めているのは、魅力的なストーリーではなく、それを裏付ける「結果」です。収益として形になり、数字で示されて初めて、期待は揺るぎない信頼へと変わります。だからこそ私たちは、言葉だけで戦略を語ることはしません。私たちが描く未来を、確かな実績と数字で証明し続けることこそが、資本市場と向き合う覚悟であり、約束です。
一方で、企業価値は財務資本だけで決まるものではありません。
人を育てる企業文化。挑戦を後押しする風土。世界へ挑むクリエイター。新しい価値を生み出す創造性。社会との信頼関係。こうした無形資産こそが、長期的な企業価値の源泉です。だから私は、人への投資を惜しみません。創造への投資を止めません。未来への投資をためらいません。優れた人材が集い、挑戦し続けること。社会から信頼される企業であり続けること。透明性の高いガバナンスを貫くこと。その積み重ねが、中長期的な企業価値を支えています。
経営とは「信頼を積み重ねる仕事」だと考えています。株主・投資家の皆さま、視聴者・リスナー、ユーザーの皆さま、ビジネスパートナーの皆さま、地域社会の皆さま、そして、未来をともにつくる社員一人ひとり、すべてのステークホルダーから信頼される企業であり続けること。その積み重ねこそが、企業価値となり、次の挑戦への力になります。そして、その成果を資本市場へ誠実に示し続けます。それが、私たちが株主・投資家の皆さまにお約束する経営です。
※注 投下資本利益率。事業活動に投じた資本で、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
優れたコンテンツは、一人の才能だけから生まれるものではありません。異なる個性が出会い、互いに刺激し合い、新しい発想が生まれる。その積み重ねが、時代を動かす作品や文化を生み出してきました。だから私は、「創造できる環境」をつくることも、経営者の大切な仕事だと考えています。
TBSグループは、これまで七十余年にわたり赤坂を拠点に、多くの番組や文化を生み出してきました。私は、この街を今までのように「放送局のある街」として発展させるだけでは満足していません。世界中から才能が集まり、新しい挑戦が始まり、新しい文化が育つ。そ 08