株式会社TBSホールディングス代表取締役副社長株式会社TBSテレビ代表取締役社長龍宝 正峰
2025年9月。国立競技場に地鳴りのような歓声が響き渡りました。
「東京2025世界陸上」、世界中から集まったトップクラスのアスリートの真剣勝負。その熱狂を一人でも多くの人に届けるために、私たちTBSグループは総力を挙げて取り組んできました。2023年の8 月に前回大会がヨーロッパの古都ハンガリー・ブダペストで開催されました。陸上競技が最も盛んなヨーロッパで、3万人を超えるキャパシティのスタジアムが超満員。熱狂的な観客が選手を後押しする中、女子やり投げの北口選手が最終投擲で逆転の金メダルをとった瞬間から、この大会を超えるイベントにしようという強い思いが私たちの中に生まれました。
この世界陸上に向けて私たちが掲げた目標は、 ① 9日間通じての国立競技場のフルスタジアムの実現 ② 「 東京2025世界陸上」というイベントの社会現象化とコンテンツの最大活用 ③ 視聴者・観客に圧倒的な満足感を届けるという、単に放送を届けることだけではなく、私たちが起点になって社会現象を起こし、日本の元気を世界に発信することでした。
目標を立てたのはよいのですが、何と言っても国立競技場は、ブダペストの競技場のキャパシティを大きく上回る、7万人規模の大きな会場です。中継の制作を担うスポーツ局だけでなく、社内のさまざまなセクションから集まったメンバーは「このスタジアムを一杯にするにはどうしたらよいか」、そして「社会現象とするには何をすべきか」ということを2年間、毎週議論してきました。まず私たちは、この大会の機運醸成を担当し、デザインセンターを中心に「紫」を基調とした洗練されたキービジュアルを作成し、それをベースに、港区内の小学生と協力してキャラクター「りくワン」をつくり上げました。一方で、バラエティ番組や報道・情報の番組でも、多くの仲間たちがそれぞれの言葉で大会・競技の魅力を紹介してくれました。部門の垣根を越えた「チームTBS」が、多くの人気番組で陸上の魅力を発信し、視聴者の「見たい」という気持ちを醸成していくことで、国立競技場を「フルスタジアム」へと変える原動力となり、9日間で延べ62万人を動員することができたのです。
選手がトラックを走る中、満員の客席が揺れ、ウエーブでアスリートに声援を送る。そして、アスリートがその声援にこたえて限界を超えたパフォーマンスを披露する。最高の盛り上がりがスタジアムを埋め尽くします。さらに、JNNネットワークの仲間を通じて、放送でも全国でのべ 8,000万人近くもの人が世界陸上を視聴しました。まさに、「テレビの力で日本中の視聴者の心を動かす」ことが実現した瞬間でした。
スタジアムで感じた震えるような興奮、そして放送を通じて日本中に伝播したあの熱量。私たちの、テレビの力が大きく貢献したことは間違いありません。その瞬間、私は確信しました。「テレビには、まだこれほどまでに人を熱狂させ、社会を動かす力がある」ということを。このテレビのメディア価値を信じ、さらにそれを拡張していくことで、もっと社会に貢献できるということを。そして、強い思いをもって、このビジネスを推進していこうという気持ちを新たにしました。
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